精神の<北>へとは

プロジェクト趣旨

アートプロジェクト「精神の〈北〉へ」は、東日本大震災の被害を受けた東北地方の再生を期して、2013年から福島県において開始しました。人々の真の再生のためには、東北が本来内包していた豊かな精神性を再認識し、それを回復することが必要でしょう。

その精神性とは、例えば、かつて蝦夷(えみし)と呼ばれた東北の先住民の精神に宿り、鹿踊りや奥州平泉の中尊寺建立供養願文に込められた鎮魂の祈りや、宮沢賢治の世界観にも通底する、「眼に見えない聖なるものへの畏敬」「森羅万象への分け隔てのない眼差し」「動物や森や宇宙とも融和する原初性」が感じられるものです。
それは、東北のみならず、アイヌ民族や世界の北方民族、さらには地域に限らず人々の内にある。これを「北方的精神」と呼ぶことにします。「精神の〈北〉へ」は、各人にとっての「北方的精神」、ひとりひとりの内なる「北」とは何かを探り、世界的な視野でその共振を図ろうとするプロジェクトです。アーティストや様々な分野の研究者による、知的・感性的な交流と融合を実践し、民族やフィールドの違いを越えて、新たな北方論を紡いでいきます。

多様な風土と豊かな伝承を残す福島県会津地方を活動拠点に、アーティストの滞在交流活動や展覧会、様々な研究分野のなかに〈北〉なるものを知るシンポジウム、被災者の方々との対話、それらのアーカイブとして記録集の発行などを実施しています。
滞在を共にする北方同士のアーティストたちは、会津地方に出会い、人々と対話し地域のものごとを検証することで、その固有性や他民族との共通性を発見するでしょう。それは地域の再認識であり、新たな視点と意義が加えられます。作品は、地域や人とアーティストとのこのような共振から生まれます。
 
開催ごとの表現、学び、人のつながりは一過性ではなく、蓄積される資源となります。福島から発信するこの活動は、共振する世界の北方人のネットワークの要となって、新たな活動を生みだすことを目指していきます。
このような交流によって見出される“世界の中の東北”というアイデンティティが東北人としての誇りにつながり、精神の回復となることを期して、この活動の目的としています。

丸山芳子
美術家・「精神の〈北〉へ」実行委員会委員長

実行委員会

五十嵐 恵太・猪俣 まさえ・金親 丈史・黒田 綾子・阪下 昭二郎・生江 敬久・馬場 由紀子・蛭川 靖弘・星 宏一・丸山 常生・丸山 芳子 ・齋藤 智・武藤 弘毅・矢部 佳宏

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